プロが試合で立つアプローチは、つまり檜舞台であり、そこでより自分を表現するために、ユニフォームはとても大事な衣装だと思っています。
だから自分でなければ着られない、自分に似合うものを着たいと、いつもユニフォームにはこだわって、そして背中の刺繍はプロになった当初から、吉田豊さんにお願いしていました。
吉田さんは、自分が手掛けたユニフォームを着てプロが試合で結果を出すことを何よりの喜びとし、洗うと歪んでしまう普通の刺繍では満足せず、常に素材との相性を研究して、そうならないように工夫を重ねたり、納品時に行う最終工程であるプレス作業に耐えない素材は受けないなど、けして妥協しない職人魂と高い技術を持った方でした。
また気に入らない人からのオーダーは受けないこともある頑固な面も持つ反面、作品の仕上がり時に励ましの手紙を同封してくださったりと、人間味溢れる温かい心を持った方でした。
そんな、作品を大切に仕上げる吉田さんの心意気に私は惚れ込み、尊敬していましたので、プリント技術が進んで、一時、刺繍が流行らない時期にもずっとオーダーしていました。
吉田さんは残念ながら2005年に亡くなられましたが、ご本人も大のボウリング好きで、亡くなる直前まで投げていらっしゃいました。
吉田さんの手による新作はもう増えませんが、ここに紹介しきれないほどある今までの作品を大切な宝物として着て行きたいと思っています。
